断面一次モーメントの計算方法がわかりません。教えてください。
この記事では以下の3つについて解説します。
この記事を見ながら一緒に断面1次モーメントを理解していきましょう。
明石高専で構造力学を学んだ僕が、解説します。
目次
断面一次モーメントとは
断面1次モーメントとは、それぞれの座標軸に対して、任意の座標からの距離を部材の断面積で積分した量のことを言います。
公式は、以下の通り
断面1次モーメントが分かれば図心がわかる
言い換えれば、断面1次モーメントを面積で割り算すると図心が出ます。
式で表せば、\(G_{x} / A = y_{0}\)となります。
と言っても難しい。そんなあなたに一覧表を用意しました。
とは言っても、わけわからんですよね。具体的に計算しつつ、解説していきます。
断面1次モーメント公式の導出・計算方法
断面一次モーメントの公式は以下の通り。
これだけだと、よくわからないですね。問題を解きながら詳しく解説します。
断面1次モーメントの導出と図心の計算①:四角形
簡単な四角形から計算してみましょう。こんな図形を考えます。
これを公式に当てはめると、
\(G_{x}=\int ydA\)
このままだと計算ができないので、\(dA\)をなんとかしましょう。
\(dA = 底辺b \times 高さdy\)と表現すると\(G_{x}=\int y \times b \times dy \)となります。
積分の範囲は\( 0 ~ h \)までなので、計算式は\(G_{x}=\int^{h}_{0}ybdy \)となります。
これで計算できますね。
\(G_{x}=\int^{h}_{0}ybdy \)
\(G_{x}=\left[ \dfrac{1}{2}by^{2}\right] _{0}^{h}\)
これを計算すると\(G_{x}=\dfrac{bh^{2}}{2}\)となります。
y軸に対する断面1次モーメントも同じように考える
\(G_{y}\)も同じように考えると、(G_{y}=\int xdA\)
\(dA = 高さh \times 底辺dx\)と表現すると\(G_{x}=\int y \times h \times dx \)となります。
これを計算すると\(G_{y}=\dfrac{b^{2}h}{2}\)となります。
四角形の図心は中心にくる
図心の公式は、\(\dfrac{G_{x}}{A}\)。ここで面積は\(bh\)なので、
こうなります。
断面1次モーメントの導出と図心の計算②三角形
では、三角形もやってみましょう。
\(dA\)が少し難しいですね。\(dA\)の高さは\(dy\)ですが幅が\(y\)の位置によって変化します。
なので、1次式で表現します。
\(dA\)=幅(\(-\dfrac{b}{h}y-b\))\(\times\)高さ\(dy\)と表現できます。
後は積分するだけ
ということで、三角形の断面1次モーメントを求める式は以下の通り
\(G_{x}=\int{h}{0}ydA\)
\(G_{x}=\int^{h}_{0}y(-(\dfrac{b}{h}y-b)dy\)
これを解くと、
\(G_{x}=\int^{h}_{0}yb-\dfrac{b}{h}y^{2}dy\)
\(G_{x}=\left[ \dfrac{1}{2}by^{2}-\dfrac{1}{3}\dfrac{b}{h}y^{3}\right] _{0}^{h}\)
\(G_{x}=\left[ \dfrac{1}{2}bh^{2}-\dfrac{1}{3}bh^{2}\right] \)
\(G_{x}=\dfrac{1}{6}bh^{3}\)
y軸に対する断面1次モーメントも同じ
図形を90度ひっくり返すと同じ計算ができます。つまり、\(b\)と\(h\)を入れ替えるだけ。
つまり、\(G_{y}-\dfrac{1}{6}b^{3}h\)です。
三角形の図心は\(\dfrac{1}{3}\)の位置にある
図心の公式は、\(\dfrac{G_{x}}{A}\)。ここで面積は\(\dfrac{1}{2}bh\)なので、
断面1次モーメントの導出と図心の計算③円
円は少しややこしいですが、一緒にやってみましょう。
この時、三角関数を使って考えます。
\(x\)と\(y\)を三角関数(半径\(r\)と\(\theta\))に置き換えて考える
以下のようになります。
この場合、積分範囲は\(0~h\)だったものが、\(\dfrac{\pi}{2}~-\dfrac{\pi}{2}\)となります。
以上より、円の断面1次モーメントを求める式は、
\(G_{x}=\int^{\dfrac{\pi}{2}}_{-\dfrac{\pi}{2}}(r+r\sin(\theta)) \times 2r\cos(\theta)\times r\cos(\theta))\)
ややこしいですね。\(r\)をまとめて積分の外に出して、\(\sin\theta\)にまとめましょう。
\(G_{x}=2r^{3} \int^{\dfrac{\pi}{2}}_{-\dfrac{\pi}{2}}(1+\sin(\theta))(\cos^{2}(\theta))\)
\(\cos^{2}(\theta)=1-\sin^{2}(\theta)\)なので、
\(G_{x}=2r^{3} \int^{\dfrac{\pi}{2}}_{-\dfrac{\pi}{2}}(1+\sin(\theta))(1-\sin^{2}(\theta))\)です。
まとめると、
\(G_{x}=2r^{3} \int^{\dfrac{\pi}{2}}_{-\dfrac{\pi}{2}}(1-sin^{2}(\theta)+\sin(\theta)-sin^{3}(\theta) \)です。
2倍角、3倍角の公式を使って積分する
それぞれ積分しましょう。\(sin^{2}(\theta)\)とか\(sin^{3}(\theta)\)の積分は公式をカンニングします。
まとめると、
\(G_{x}=2r^{3} \left[ \theta - \dfrac{1}{2}\theta-dfrac{1}{4}\sin2\theta - -\cos\theta+\dfrac{1}{3}\cos^{3}\theta \right]_{\pi/2}^{-\pi/2} \)
ここで、\(\dfrac{\pi}{2}\)と\(-\dfrac{\pi}{2}\)のとき、\(\cos\theta=0\)、\(\sin2\theta=0\) なので、
\(G_{x}=2r^{3}\left[\dfrac{\pi}{2}-\dfrac{\pi}{4}\right]\)
\(G_{x}=\pi r^{3}\)
円の図心は中心にある
当たり前ですね。ですが、式で証明します。
図心の公式は、\(\dfrac{G_{x}}{A}\)。ここで面積は\(\pi r^{2}\)なので、
断面1次モーメントの導出と図心の計算④半円
半円もやっておきましょう。円と似た流れでできます。
これも三角関数を使います。
半円は三平方の定理を使う
円の時は三角関数を使いましたが、半円では三平方の定理を使いましょう。
この時、\(y\)の範囲は、\(0\)から\( r\)まで。
\(G_{x}=\int^{r}_{0} y \times 2\sqrt{r^{2}-y^{2}}dy\)
\(r^{2}-y^{2}\)を\(t\)として置換積分する
\(r^{2}-y^{2}\)置換積分すると\( \dfrac{dy}{dt}=-2y \)、つまり、\(dy = -\dfrac{1}{2y}dt\)となります。
範囲は\(y=0\)のとき\(t=r^{2}\)、\(y=r\)のとき\(t=0\)です。
\( G_{x} = \int^{0}_{r^{2}} 2y \times (-\dfrac{1}{2y}dt) \)
\( G_{x} = \int^{0}_{r^{2}} 2y \times \sqrt{t} \times (-\dfrac{1}{2y}dt) \)
\( G_{x} = \int^{0}_{r^{2}} - \sqrt{t} dt) \)
\( G_{x} = \int^{r^{2}}_{0} \sqrt{t} dt) \) (範囲を逆にして- を消しました。)
\( G_{x} = \left[ \dfrac{2}{3}t^{\dfrac{3}{2}} \right]^{r^{2}}_{0} \)
\( G_{x} = \dfrac{2}{3} r^{3} \)
半円の図心は\( \dfrac{4}{3\pi}r \) の位置にある
図心の公式は、\(\dfrac{G_{x}}{A}\)。ここで面積は\( \dfrac{1}{2} \pi r^{2} \)なので、
\( \dfrac{4}{3 \pi} = 0.4244....\)なので、真ん中よりも下に寄った位置に図心があるってことですね。
円、三角形、四角形の図心と断面1次モーメントのまとめ
代表的な断面1次モーメントと図心の位置です。とりあえず3つだけ覚えましょう。
図心から考える断面1次モーメント
これって、全部、積分しなきゃいけないの?
いえいえ。基本的な図形の図心さえ覚えておけば、断面1次モーメントは求められます。
\( G_{x} = y_{0} \times A \)
断面1次モーメント = 図心 \(\times\) 面積
これで計算すると複雑な図形も簡単です。これだと複雑な図形の図心もすぐに求めることができます。
断面一次モーメントは足し引きできる
断面一次モーメントは足し引きできます。
下の図で考えてみましょう。
四角形と三角形が組み合わされた図です。わかりやすく分解して書いてみます。
この場合、\( G_{x} = y_{0} \times A \)で計算してみましょう。
図心の位置 \( \times \) 図心までの距離 = 断面1次モーメント
1つずつの断面1次モーメントは以下の通り
これの合計が、全体の図形と同じになるはず。全体の図形の図心を\(y_{0}\)として、
全体の断面1次モーメント = 個々の断面1次モーメントなので、
\( bh_{2}+ \dfrac{bh_{1}}{2} + y_{0} = bh_{2} \ dfrac{h_{2}}{2} + \dfrac{bh_{1}}{2}(h2 + \dfrac{h_{1}}{3}) \)
これを計算すれば全体の図形の図心\(y_{0}\)が求められます。
このようにあらゆる図形で計算できます。
まとめ:断面1次モーメントをわかりやすく解説
断面1次モーメントのまとめです。公式は以下の通り。
基本的な3つの図形の断面1次モーメントと図形の位置を覚えましょう。
複雑な断面1次モーメントは分解して考える
複雑な図形の断面1次モーメントは以下の式で計算できます。
\( G_{x} = y_{0} \times A \) つまり、面積 \( \times \) 図心までの距離
複雑な図形、(断面1次モーメント \(G_{x} = y_{0} \times A\)の合計 = 面積の合計 \( \times \) 図心までの距離\( y_{0} \)で計算しましょう。
断面1次モーメントは問題を解いて慣れよう
『構造力学は問題を1問でも多くといた人の勝ち』です。
なぜなら、問題を解かないと理解できないからです。
解答を見ながらでOK。とりあえず、解いてみましょう。
以下の問題集がおすすめです。
ちなみに、構造力学のオススメ参考書は『構造力学が苦手な人が読むべきオススメ参考書5選』でまとめていますので、ぜひ参考にしてください。